遠距離介護だけではない。離れて暮らす家族の「距離」と「つながり」をどう支えるか?

家族が離れて暮らすことが珍しくない現在、介護が始まったとき、

「近くに住んでいないから、十分に支えられない」

という悩みが生まれることがあります。

一方で、物理的には近くに住んでいても、家族自身が高齢だったり、移動に不安があったりすれば、施設との「距離」は大きな問題になります。

私は介護や施設入居の相談に携わる中で、距離そのものよりも、その家族がどのような関係を続けたいのかを考えることが大切なのではないかと感じることがあります。

今回は、私が関わった二つの事例をご紹介します。

※以下は実際の相談事例をもとに、個人が特定されないよう一部情報を整理して紹介しています。

目次

「できるだけ近くにいてほしい」という妹様の希望

一つ目は、80代男性の施設入居についての相談です。

男性は入院するまで介護認定も受けず、一人で生活していました。

しかし、入院をきっかけに身体機能が低下し、車椅子での生活となり、医療的な管理も必要になりました。

それまで男性は、妹様と同じ公営住宅の別の階で暮らしていました。

お兄様が一人で生活できていたからこそ、それぞれの生活を保ちながら、兄妹で支え合うことができていました。

しかし、施設入居が必要となったことで状況が変わります。

妹様自身も足が悪く、電車を乗り継いで遠くの施設まで面会に行くことは困難でした。

そのため施設選びでは、ご本人に必要なケアを受けられることに加えて、妹様が無理なく会いに行ける距離であることも大切にしました。

施設を選ぶことは、家族関係をどう続けるかを考えることでもある

ご両親が亡くなった後、支え合って暮らしてきた兄妹です。

施設へ入居したからといって、その関係が終わるわけではありません。

妹様には、入居後も時にはお兄様の顔を見に行きたいという思いがありました。

介護の場所やサービスの選択肢が増え、家族の形も多様になっています。

だからこそ私は、施設の設備や費用、介護内容だけではなく、

「入居した後も、このご家族はどのような関係を続けていきたいのか」

ということも大切にしながら支援したいと考えています。

家族は遠方。介護はケアマネジャーに任せていた

もう一つは、認知症のある80代女性の事例です。

ご本人は一人暮らしを続け、日常生活動作は自立していました。

しかし、認知症の進行によって不安が強くなり、事業所や家族への電話が徐々に増えていました。

ご家族は遠方に住んでいました。

仕事も忙しく、帰省できるのは年に数回程度。日頃の介護についてはケアマネジャーに任せ、主にメールで連絡を取っていました。

在宅生活の継続が難しくなってきたため、グループホーム探しを始めました。

家族がその場にいなくても、支援を進める方法はある

ご本人は不安が強かったため、施設見学にはケアマネジャーにも同行していただきました。

一方、遠方にいるご家族については、施設側にも協力いただき、Zoomを使った面談や契約を行いました。

その結果、ご家族に何度も現地へ来ていただくことなく、入居まで進めることができました。

この事例では、オンラインだけで介護を解決したわけではありません。

ご本人の近くにはケアマネジャーがいて、施設側の協力もあり、遠方にいるご家族とはオンラインでつながる。

それぞれの立場の人が、できることを組み合わせたことが大切だったと感じています。

「遠距離介護=家族が全部通う」ではない

仕事をしながら離れた地域の家族を支えている人にとって、頻繁な帰省は大きな負担になります。

介護が始まると、

「自分が行かなければ」
「家族だから自分がしなければ」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、地域の介護サービスや専門職、ICTなどを組み合わせることで、家族がすべてを直接担わなくても支援を組み立てられる場合があります。

仕事と介護を両立していくためにも、家族だけで抱え込まないことは大切です。

企業からは見えにくい「距離」という負担

企業の方にも知っていただきたいことがあります。

従業員から、

「親の介護があります」

と聞いただけでは、その人が実際に抱えている負担の大きさまでは分かりません。

  • 親が近くに住んでいるのか?
  • 遠方なのか?
  • 本人以外に支援できる家族がいるのか?
  • 家族自身も高齢なのか?
  • 地域に頼れる専門職がいるのか?

同じ「家族介護」でも、置かれている状況はそれぞれ違います。

もちろん、企業が家庭の事情に必要以上に踏み込む必要はありません。

ただ、

「介護していますか」だけではなく、「仕事との両立で困っていることはありますか」

と聞くことで、必要な支援が見えてくることもあるのではないでしょうか。

距離があっても、家族とのつながりを切らない

今回ご紹介した二つの事例は、一方が「できるだけ近くの施設を探したケース」、もう一方が「遠方の家族とオンラインでつないだケース」です。

方法は異なります。

しかし、私には共通していることがあるように思います。

それは、

距離だけで支援方法を決めるのではなく、本人と家族がどのような関係を続けたいのかを考えること

です。

家族の形も、働き方も、住む場所もさまざまです。

だからこそ、そのご家族に合わせて、介護サービスや専門職、ICT、企業の制度など、利用できるものを組み合わせていく。

介護する人と介護される人、どちらか一方が生活を大きく犠牲にするのではなく、双方の生活をどうすれば維持できるのかを一緒に考えることが、仕事と介護の両立支援にもつながっていくのではないかと感じています。

ワーキングケアラー支援・介護離職防止のための
研修・組織開発に活用できる「けあことば100選」を資料(PDF)にまとめました。

ビジネスケアラー支援・介護離職防止のための
研修・組織開発に活用できる
「けあことば100選」を
1冊の資料(PDF)にまとめました。

介護離職リスク診断と対策の第一歩として、
無料相談をご利用ください。

貴社の現状を踏まえた
具体的なアドバイスをご提供します。

無料相談の段階でない方も、
まずは小さいこともお気軽に
お問い合わせください。


この記事を書いた人

中澤 友紀のアバター 中澤 友紀 正看護師

訪問看護ステーションや定期巡回随時対応型訪問介護看護の管理者として、10年以上にわたり在宅ケアの最前線に携わりました。

「兵庫県定期巡回随時対応型訪問介護看護協議会」の設立に関わり会長に就任するなど、普及促進事業を通じ多くの利用者様とご家族を支援。

私生活では2児の母。長年パーキンソン病の母を在宅で介護し、看取りまでを経験した元ケアラーでもあります。

現在は、自身の経験と専門知識を活かし、企業の「介護離職防止支援」や無料介護相談窓口「これからサポート」を運営。

目次