「もう少し早く相談できていたら」介護離職・共倒れを防ぐために知っておきたいこと

家族の介護が始まったとき、「まだ大丈夫」「もう少し自分たちで頑張れる」と考える方は少なくありません。

私は看護師として、介護や施設入居に関する相談に携わっています。

その中で感じるのは、介護の状況は少しずつ変化することもあれば、認知症の進行や入院などをきっかけに、急激に変わることもあるということです。

今回は、私が実際に関わった二つの相談事例から、介護離職や家族の共倒れを防ぐための「早期相談」について考えてみたいと思います。

※以下は実際の相談事例をもとに、個人が特定されないよう一部情報を整理して紹介しています。

目次

「ゆっくり施設を探す」はずだった

一つ目は、認知症の母親を支えていた50代男性からの相談です。

母親は一人で暮らし、平日はデイサービスやヘルパーによる家事支援を利用していました。

男性夫妻は離れた地域に住んでおり、週末に母親のもとへ行き、食事や買い物などを手伝っていました。

ところが、認知症の症状が進むにつれて、夕方から夜にかけて一人で過ごすことへの不安が強くなり、夜間に男性へ電話することが増えていきました。

男性にはうつの既往があり、介護負担が大きくなることで、本人の心身への影響も心配される状況でした。

相談を受けた当初は、施設を見学しながら時間をかけて探していく予定でした。

しかし、その後、母親の認知症が急激に進行し、早期に入居できる施設を急遽探すことになりました。

幸い、グループホームに空きが出たことで入居につながりました。

当初は不安そうだったお母様も、その後は他の入居者の方と食事の準備をしたり、体操をしたりしながら、穏やかに過ごしておられます。

在宅介護から施設へ。「いつ」が難しい

この事例を通して改めて感じたのは、在宅介護から施設入居へ移るタイミングの難しさです。

本人が在宅生活を希望している。

家族も、できる限り自宅で支えたい。

その気持ちがある一方で、認知症や身体状況は変化していきます。そして、家族の介護負担も一定ではありません。

家族の負担が限界になる前に、そのタイミングを見極めることが大切だと感じています。

そのためには、日頃の様子を見ているケアマネジャーやヘルパーなどからの情報も重要です。

本人だけを見るのではなく、家族の状態にも目を向けながら、関係する専門職が連携して状況の変化に対応していく必要があります。

定年まで、あと1年。それでも仕事を辞めた

もう一つ、今でも「もう少し早く相談につながっていたら」と感じる事例があります。

相談の対象となったのは、認知症のある60代男性です。

もともとは高齢のお母様に介護が必要で、男性と妹様とで支えていました。

ところが、あるとき妹様が訪問すると、男性がリビングの床で長時間横になったままになっていました。背中には褥瘡もできており、医療機関へ入院することになりました。

認知症による活動性の低下が原因と診断されました。

これによって妹様は、高齢の母親と、介護が必要になった兄の二人を支える立場になりました。

そして、定年まであと1年という時期に、介護のため早期退職することを決められました。

その後、お母様は在宅生活を継続し、車椅子での生活が必要となったお兄様は施設へ入居することになりました。

支援体制が整った後、妹様は、結果的には退職しなくても仕事を続けることができたかもしれないということを、笑って話しておられました。

私はその言葉を聞いて、

「もう少し早く相談できていたら、何らかの支援ができていたのではないか」

と感じました。

介護休業は「自分が介護するためだけ」の制度ではない

仕事と介護を両立するためには、企業の制度と介護サービスの両方を知ることも重要です。

厚生労働省は、介護休業について、休業期間を単に自分が介護を行う期間と考えるのではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための期間として活用することを案内しています。

介護保険サービスや介護休業、介護休暇、短時間勤務等の措置などを組み合わせながら、働き続ける方法を考えることができます。

また、2025年4月からは、介護離職防止のため、介護休業・介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境の整備されています。

これにより、介護に直面した従業員への個別の制度周知・意向確認、40歳等の段階での早期情報提供などが事業主に求められるようになりました。

「困ってから」ではなく、「困る前」に

介護が始まってから初めて、

  • 「どこに相談すればいいのか」
  • 「どんなサービスがあるのか」
  • 「会社には何を相談できるのか」

を調べるのでは、本人にも家族にも大きな負担がかかります。

相談窓口がもっと増え、その存在が知られることで、助かる人も増えるのではないかと私は感じています。

企業にとっても、制度を用意するだけではなく、従業員が介護に直面する前から情報を届け、相談しやすい環境をつくっておくことは大切です。

介護離職を防ぐためにも、

「まだ大丈夫」という段階で相談し、選択肢を知っておくこと。

実際の相談現場に関わってきたからこそ、その重要性を多くの方に知っていただきたいと思っています。

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この記事を書いた人

中澤 友紀のアバター 中澤 友紀 正看護師

訪問看護ステーションや定期巡回随時対応型訪問介護看護の管理者として、10年以上にわたり在宅ケアの最前線に携わりました。

「兵庫県定期巡回随時対応型訪問介護看護協議会」の設立に関わり会長に就任するなど、普及促進事業を通じ多くの利用者様とご家族を支援。

私生活では2児の母。長年パーキンソン病の母を在宅で介護し、看取りまでを経験した元ケアラーでもあります。

現在は、自身の経験と専門知識を活かし、企業の「介護離職防止支援」や無料介護相談窓口「これからサポート」を運営。

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